平間一也が語る、設置する人が10年前より増えている理由 — FIT制度と電気代の10年
この記事では、エコダ代表の平間一也さんに、FIT制度と電気のこれからをインタビューし、記事にまとめました。
太陽光発電を取り巻く数字は、この十年で大きく動いています。売電の単価は下がり、購入する電気の単価は上がっています。制度の面でも、家庭が受け取る買取価格は当初の水準から遠く離れました。
にもかかわらず、住宅に太陽光を設置する家庭は減っていません。むしろ増えています。この一見ねじれた状況を、業界はどう説明するのでしょうか。戸建て向け太陽光・蓄電池の専門店として全国5拠点で事業を展開する株式会社ECODA代表、平間一也さんに伺いました。
十年前と今で、設置する目的が入れ替わり
——十年前に設置した方と、これから設置する方で、判断の基準は変わってきているのでしょうか。
平間一也さん:基準というより、目的そのものが違います。ここが根本的なところです。
十年前は、売電で収入が得られるから、とりあえず屋根に載せておいたほうが良いという考え方でした。設備を持つことが収益になる、という前提です。だから多くの方が、経済的な上振れを期待して設置されていました。
しかし、いまは違います。売電で得られる金額は当時の水準にないため、上振れを狙って設置される方はほとんどいません。それでも設置される理由は、電気代の高騰があまりに大きいためです。家から出ていくお金を減らすために設置されている、と言ったほうが正確です。
——設備の位置づけが、収益源から支出の抑制へ移ったということですか。
平間一也さん:そうです。そして今後はもう一段変わっていくと見ています。新築の戸建てでは標準設備になってきていますので、設置するかどうかを施主が判断する場面自体がなくなっていく。付けるか付けないかを問われずに付いている時代に入っていきます。
制度は変わっていませんが、関心は薄れている
——FIT制度は現在どうなっているのでしょうか。
平間一也さん:仕組み自体は変わっていません。十年間の固定価格で買い取られるという枠組みは維持されています。設置してからの一年目から四年目までと、五年目から十年目までで単価が分かれる形になっており、後半は前半よりかなり低い水準に設定されています。
数字を挙げると、前半が一キロワットアワーあたり二十四円、後半が八円台という水準です。年度によって改定されますので、実際に適用される単価は設置の時期によって変わります。
——買取価格が下がっていくことは、導入の判断に影響しないのでしょうか。
平間一也さん:ほとんど影響していません。そもそも売電をメインの目的として設置される方が、いま存在しないからです。
制度の改定が発表されるたびに、太陽光の経済性が失われたという論調が出てきます。ただ、実際に相談に来られる方の関心は買取価格にありません。関心があるのは、毎月の電気代がどれだけ下がるかという点です。ですから、FIT価格が下がっても、いま設置される方の判断はそこに左右されないという構図になっています。
電気代と賦課金が、判断の前提を変えた
——では、判断の前提になっているのは何なのでしょうか。
平間一也さん:電気代の上昇そのものです。ここは数字が明確に出ています。
電気代は年平均で三・六五パーセントのペースで上昇しています。このまま推移すれば、二〇五〇年度には現在の約二・四六倍になると予測されています。将来の話に聞こえるかもしれませんが、十年で四十から六十パーセントの値上がりというのはすでに現実として起きたことです。
——再生可能エネルギー発電促進賦課金についてはいかがですか。
平間一也さん:賦課金は約十四年前に創設された仕組みで、この十四年で約十九倍に上昇しています。毎月の電気代に上乗せされて請求されており、今後も増えていく見込みです。
再生可能エネルギーの普及を支えるための費用を、電気の使用量に応じて全世帯で負担する仕組みです。つまり、電力会社から買う量が多い家庭ほど負担が大きくなります。自家消費によって購入量を減らすことは、賦課金の負担を減らすことにも直結します。この構造が、電気代の上昇と合わせて設置の動機を押し上げています。
増えているという事実が、答えになっている
——経済性を疑う声には、どう答えていますか。
平間一也さん:ひとつだけ考えてみていただきたいことがあります。もし本当に、十年前に設置した方のほうが経済的に助かっていたのであれば、いま設置する方は激減しているはずです。
ところが実際には、いまのほうが設置される方が多い。これは、上振れを期待する動機よりも、支出を抑える動機のほうが強く働く局面に入ったということです。買取価格という一つの数字だけを見ていると、この転換が見えなくなります。
まとめ
十年前の太陽光は、売電による収入を目的とした設備でした。いまの太陽光は、上昇し続ける電気代への対処として選ばれています。平間さんの説明は、この目的の入れ替わりに一貫していました。
FIT制度の枠組みは維持されていますが、売電を主目的とする設置者がいないため、買取価格の改定は導入判断にほとんど影響していません。代わりに前提となっているのは、年平均三・六五パーセントという電気代の上昇と、十四年で約十九倍に膨らんだ再エネ賦課金です。電力会社からの購入量を減らすこと自体に価値が生まれる構造が、いまの需要を支えています。
そして次の段階として平間さんが挙げたのは、新築戸建てでの標準設備化でした。施主が設置の可否を判断する局面そのものが消えていくという見通しです。判断の材料が変わるという話ではなく、判断が発生しなくなるという指摘でした。